歯科医師をしていると、とてもよく聞かれることがあります。
「どこの歯医者さんがいいの?」「どこの歯医者さんが上手なの?」
確かに歯医者さんの腕の良し悪しは、将来おいしくご飯が食べられるかどうか、美しいお顔になれるかどうか、に直接関係します。
それを知りたいからこそ、みなさまは周りの人の口コミやインターネットで検索して、自分の大切な体を任せることのできる人を探すのです。
では私達歯科医師が自分や自分の大切な人の歯を治療してもらうときに、誰に自分の体を任せるでしょうか?どうやってその歯科医師の能力を判断するのでしょうか?
歯科医師の目で見て、他の歯科医師の仕事内容・その能力を推し量るのは、「写真・症例発表」以外にはありません。それ以外のものでは、本当のところはよくわからないのです。
しかし一般の方から見て、「写真・症例発表」はわかりにくいものです。
そこでできるだけわかりやすく実例を解説してみました。
また、単純に美しいと感じられるものには、奥行きのある中身があるものです。
そして機能に優れたものには、自然と美しさが備わります。
ここにある美しい写真が撮影されるためには、そこに至るまでに膨大な努力が必要でした。
以下の症例写真はすべて当院で行われた治療によるものです。歯科雑誌・メーカーのパンフレット・他院のホームページからの転載ではありません。
「骨がないのでインプラントはできません。」
よく聞くお話です。
確かに絶対に不可能と思われるケースもありますが、骨をつくることができればインプラントが可能になるケースもあります。
この方は非常に効果的な骨再生を行い、インプラントを成功させることができた例です。
治療前のレントゲン写真です。
長期間の不適合な入れ歯の使用で、ばねのかかった歯はぐらぐらになり、入れ歯を支えていた顎の骨は痩せてしまいました。
このままでもインプラントを入れることはぎりぎり可能でしょうが、外科処置で神経を損傷するのリスクも高く、長期にわたって安定するためにはインプラント周囲に十分な骨があることが望ましいといえます。
そこで人工の材料を使用して、新たに骨を再生することを計画しました。
骨の再生療法は世界的にかなり一般的なものです。
当院では世界標準といえるアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を受けた、科学的根拠に基づく人工材料を使用しています。
治療後のレントゲン写真です。
骨再生のなかでも最も難易度の高い、垂直的な骨再生を6mm行っています。
治療前と治療後の比較です。
垂直的な大幅な骨再生により、長期的に安定するインプラント治療を行うことができました。
次の方です。
治療前のレントゲン写真です。
この方が入れ歯のばねがかかっている歯が2本とも折れてしまいました。
ぐらぐらとしていて、膿もでています。こうなると抜くほかありません。
このようにもうだめになってしまった歯を、もう少し、もう少し、と無理に残していると、抜いた後に大きく骨がなくなってしまいます。
抜いたあとにインプラントを希望されていましたが、通常ではインプラントを固定するだけの骨がないので、インプラントは不可能です。
折れた歯を抜くと、この程度まで骨が吸収することが予測されました。
そこで人工の材料を使用して、新たに骨を再生することを計画しました。
骨再生後のレントゲン写真です。
インプラントを埋入するのに十分な骨の再生が得られました。
骨の再生を6ヶ月待ってCT撮影を行い、咬み合わせと清掃性と解剖学的安全性の全てを満たすインプラントの位置と方向を検討しました。
近くに大きな血管と神経があるため、CTのデータを元につくられた外科用のガイドを用いて計画された通りに正確にインプラントを埋入しました。
十分な骨の再生が得られ、正確なインプラントの埋入が行われました。
治療前とインプラント埋入後です。
骨がなくなってしまった後に、骨を再生することでインプラントを埋入することができました。
次は別の方です。
この方はブリッジをしていた歯が折れてしまいました。
ブリッジや入れ歯にして、歯が折れて抜くことになる方は本当に多いです。
折れた歯をもう少しだけ、と無理に残していたために歯の周りに膿がたまり、歯の周りの骨が大きくなくなってしまいました。
折れた歯を抜くと、この程度まで骨が吸収することが予測されます。
歯を抜いて2ヶ月後です。
予測通りの骨の吸収がみられます。
そして骨の再生療法を行います。
十分な骨の再生が得られた後、インプラントを正確に埋入しました。
治療後の状態です。
このレベルまで骨を再生し、インプラントを正確に埋入することができました。
骨の再生前と治療後の比較です。
骨を再生することで、長期的に安定するインプラント治療を行うことができました。
骨を再生することができなければ、不十分な骨のところに無理なインプラントの埋入をすることになり、強い負荷が繰り返しかかると、インプラントが抜けてしまうこともあります。
また、最低限の骨をつくることができなければ、インプラントそのものが不可能になります。
骨の高さに関しては、現在では短いインプラントも十分な科学的根拠があるため、骨の再生は以前ほど絶対条件ではありません。
しかし、その後の長期的なメインテナンスやインプラント周囲炎の可能性を考えると、骨の再生を行った方が有利なケースも多くあると考えられます。
骨の幅に関しては、インプラントの直径プラス周囲に2mmの骨が絶対に必要です。
やはり長期的に安定するインプラント治療には、骨の再生治療は必ず必要になるでしょう。